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穂高の岩場を疑似体験

・穂高岳の岩場 武藤 昭ほか ★★

ようやく暖かくなってきたので、そろそろ活動開始しようかな?っていう今日この頃です。

足の状態の実地テストもありますし。

山に行けない時期は色んな山岳図書で気を紛らわしているのですが、今回ご紹介するのは穂高岳のバリエーション34ルートを写真解説したガイドブックです。

写真 4

発行は1979年とかなり古く、現在では古本でしか入手できません。

内容は穂高の各クライミングルートの詳細な解説なんですが、アプローチから取り付き、各ピッチの核心などを豊富な写真付きで説明しており、かなり臨場感があります。

まぁ、ここまで詳細だと、単なるアンチョコを越えて行き過ぎ感はありますが…

写真 2

写真 3

この手のクラシックルートの解説本自体が少ないのですが、本書のような詳細なガイドブックはこれ以前にも以降にもないと思います。

こんな労作はもう出ないんだろうなあ…需要も少なそうだし…


ちなみに著者は原稿締め切りの関係からたった1シーズンで全ルートの取材を終えたとか。

これだけ年月が経つと崩落などにより岩場の形状も多少なりとも変わっているかも知れないけど、行ったことのあるルートは追体験を、未知のルートは疑似体験をと実際に出かけられない無聊を慰めるにはもってこいです。

モチベーション維持の効果もあり!


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山岳遭難 壮絶極まる闘病記

・ひび割れた晩鐘 亀山 健太郎 ★★
副題:「山岳遭難・両足切断の危機を乗り越えて」

退院後、骨折治療の情報をネットで調べている時に、著者の闘病記の存在を知った。

自分と同じ、沢登り中、滝の登攀での滑落、そして骨折という似た状況での闘病記ということで、すぐさまAmazonにて注文、身につまされながら一気に読了した。



著者は丹沢・源次郎沢を遡行中、F5左リッジ登攀中に滑落、両足の脛骨を開放骨折(骨が体外に飛びでる骨折)してしまう。

骨折の状況は滝つぼから飛びだした骨片を拾うほどの酷さであった。

遭難発生から救助、救急搬送されるまで、17時間、そして緊急手術。

本当の戦いはそこから始まった。

開放骨折の場合、露出した骨髄は細菌に侵され、切断の危機に曝される。

案の定、沢水に曝された骨は感染を発症し、5ヵ月以上の期間と実に7回の全身麻酔による洗浄と消毒を経て、感染による下肢切断の危機を克服した。

しかし、粉々に砕けた脛骨はそのままでは整形の手立てはなく、残された唯一の手段である「イリザロフ法による骨延長術」を選択するしかなかった。

イリザロフ法とは健全な骨を切断し、ワイヤーで固定した創外固定装置にてじわじわと骨を引き離しつつ、出来た間隙に新たな骨組織を形成して失われた骨を延長する方法である。

延長は1日1mm、著者の場合は両足10cm以上の伸展が必要であった。

そして事故から1年4ヶ月の入院を経て、絶望の淵から松葉杖での二足歩行ができるまで回復した。


本書は、遭難から救出の顛末、感染症との戦い、イリザロフ法での治療、そしてリハビリを日々の葛藤、諦念、焦燥、希望を交えて患者の目線からの詳細な記録である。

また、医師や看護師、理学療法士とのコミュニケーションから始まり、入院生活全般や治療費のことなども詳しく書かれており、怪我のレベルは異なるが、同じ経験をした自分としては、「うんうん」と頷きながら一気に読まされた。

著者はその強靭な意志と努力で自分の足で歩けるまで回復したが、治療とは患者自身の積極的な参加なくしては成り立たないということが実感される。

尖鋭的登山の遭難記でもなく、市井の誰にでも起こりうる事故の顛末、闘病記がこうして出版されたことの意義は大きいと思う。

昨今の登山ブームの警鐘として全ての登山者に、また、患者側の視点での医療現場、刻々と変わる患者の心理を知るうえでも医療に携わる人々に、さらに、今なお闘病に苦しむ患者に一読をお勧めする。


ひび割れた晩鐘―山岳遭難・両足切断の危機を乗り越えてひび割れた晩鐘―山岳遭難・両足切断の危機を乗り越えて
(2007/06)
亀山 健太郎

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おすすめの山岳図書 ~小説編 その6

・ミッドナイトイーグル 高嶋 哲夫 ★

お勧めの山岳図書で書評的なことを随時アップしてますが、できの良い山岳小説には中々出合えません。

一つの理由として実際の山、クライミングのリアルさが感じられない作品が多く、読んでいるうちに興醒めしてしまうからでもあります。

自分の山での経験を盾に上から目線で言っているわけではないのですが、これは事実です。
(実際、私の山歴など大したことないですし)



今回ご紹介する「ミッドナイトイーグル」はその最たるもので、あまりのリアリティのなさに途中で読むのを放棄しようとさえ思いました。
お勧めの山岳小説と言っておきながらなんですが…

物語のあらすじは…

核爆弾搭載の米軍ステルス爆撃機が北アルプスの槍沢上部の天狗原に墜落、それをたまたま目撃し、撮影した報道カメラマンと新聞記者が特ダネ狙いで冬のアルプスへ潜入する。そこには北朝鮮軍と自衛隊とが入り乱れて核爆弾をめぐっての激しい攻防が展開されていた。
やっとのことで、ステルスに辿りついた主人公たち。そこに迫りくる北朝鮮軍。
核爆弾が彼らの手に渡ることだけはなんとしても阻止しなければならない。
そして、最終的に政府が選択した手段とは…

まぁ、設定の意外性や核をめぐる国際的謀略など、娯楽作品としてはお膳立ては出来ています。

しかし、あまりにも安易な展開にずっこけしまくりました。

先ず、吹雪く厳冬期北アルプスでの主人公たちの行動。

書かれている設定状況なら通常、行動不可能な天候なのに、主人公たちはサクサクと行動し、出合った自衛隊員を救助さえしています。
食糧も無いのに猪突猛進に天狗原を目指す。そのモチベーションって何?
何やかんやで、気がつけば天狗原。どこから登ったん?まさか槍沢から?(゚Д゚)

その他、訓練も受けてないのに敵とのいっぱしの銃撃戦など、突っ込みどころは満載です。

あと、登場人物の心理描写も浅く、感情移入ができません。
結末も、主人公がその運命を受け入れる必然性が感じられないので、「あらら…」程度の感想です。



ぼろくそに書きましたが、これ、映画化もされたようですね。
まぁ、一般的には受けるのでしょうが…
ここまで書いたらわざわざ読む人はいるのかな?あくまでも私にとってということで。

エベレストに核爆弾搭載の人工衛星をぶち込んだ「天空への回廊 笹本稜平」の方がよほど納得がいきます。

でも、小説とは言え、あまり山に変なもの落とさないでね。

DSCN0258.jpg
夏の天狗原(槍沢上部)


ミッドナイトイーグル (文春文庫)ミッドナイトイーグル (文春文庫)
(2003/04/10)
高嶋 哲夫

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おすすめの山岳図書 ~小説編 その5

・高熱隧道 吉村 昭 ★★★

書評が続きます。
いわゆる山岳図書の分類からはちょっと外れるかも知れませんが、舞台は黒部の険谷という紛れもない「山岳」です。

昭和11年、日中事変前の戦時体制が加速される最中、黒部第三発電所建設は着工されました。

「高熱隧道」は発電所建設の中でも最も困難を極めた第一工区、第二工区、その中でも阿曾原谷軌道トンネル工事での自然と人間のたたかいを描いた記録小説です。

黒部第三発電所建設の犠牲者は300名を越えたのですが、そのうち、上記工区の犠牲者は233名であったことからも如何に凄まじい難工事であったのかが想像できます。



この工区を受け持った佐川組の技師・根津は隧道掘削のエキスパートであり、自らの矜持にかけてこの工事に取り組む。

しかし、待ち受けるのは火山地帯が故の高温の岩盤で、それは最高166度にも達した。

たび重なるダイナマイトの自然発火で犠牲になる人夫…

そして、鉄筋五階建ての宿舎を対岸の奥鐘山西壁まで吹き飛ばす泡(ほう)雪崩…

1年3カ月の難工事の末、多くの犠牲を払い、阿曾原-仙人谷間704.9メートルの水路隧道は完成した。




多くの犠牲にもかかわらず工事が継続遂行されたのは準戦時下の軍部の意向もあるのでしょうが、トンネル貫通という、至ってシンプルな目標を共有した組織は目標が困難であればあるほど達成快感をモチベーションとして異常な程の熱狂を持って立ち向かっていきます。

「なぜしんどい思いをして山に登るの?」という問いの答えもこのあたりに在りそうです。

それにしても泡雪崩に代表される驚異的な黒部の自然には圧倒されます。
この大自然の前では人間の力など一蹴されてしまうのですが、反面、強固な意志を持って目的を完遂してしまうのもまた人間です。

対峙の図式を「自然」から「敵対する集団(国)」に置き換えると、熱狂的集団の恐ろしさも垣間見えるのですが。

吉村昭が描きたかったのはそういった「人間の性」なのかもしれません。
それによって人類は進歩もし、そして戦争も繰り返してきたのですから。



第三発電所建設に際して整備された阿曾原~欅平間の水平歩道(日電歩道)
当時、この道を辿る歩荷人夫の滑落も相次ぎました。
PC311329.jpg




高熱隧道 (新潮文庫)高熱隧道 (新潮文庫)
(1975/07/29)
吉村 昭

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おすすめの山岳図書 ~ エッセイ編 その1

・山を遊びつくせ 柏瀬 祐之 ★★★

既に絶版で入手困難な本の紹介でごめんなさい。

P2241340.jpg


著者の柏瀬氏は、1970年代、国内でのめぼしいルートの初登攀も成され、谷川岳も冬季・単独などに価値のよりどころを求める時代になっていた頃、重箱の隅をつつくような初登攀偏重主義へのアンチテーゼとして「谷川岳一ノ倉沢全壁トラバース」を実行したことで有名です。
また、日本登山大系の編者の一人です。

「アンチテーゼ」と書きましたが、実際はそんな大げさな話ではなく、いくら登り込んでも一ノ倉沢を登りきった実感が得られないので、「それでは横切ってやろう」という単純な動機だったようです。
(本書 収録「なぜトラバースを」)

本書は「山と渓谷」や「岩と雪」に掲載された著者の記事に新たな書きおろしを加えたエッセイ集です。

著者は登山、登攀の登りきった後の「達成快感」だけでなく、どうやって登ったか、いかに興じたかの「過程快感」に登山の面白さを定義しています。

また、難易度重視の時代に「インタレスト・グレード」(面白さのグレード)を提唱しました。

エッセイは、どれも「過程」の面白さが軽妙な語り口で綴られているのですが、登山のジャンルにとらわれない自由な発想と視点には脱帽します。

「なぜ山に登るの?」 
「こんな面白いこと、他にないでしょ!」
 

って納得してしまいます。

この本を読んで以来、「山を遊びつくせ」が登山での私の座右の銘になりました。



随分前ですが、柏瀬さんとは伊豆の城山南壁でご一緒させてもらいました。

その時私は右も左もわからないクライミング初心者で柏瀬さんのこともほとんど知らなかったのですが、指から血を流しながらも「ハードフリーですね~!」とニコニコして登ってられた姿が印象的でした。
それはもう楽しそうで!



山を遊びつくせ山を遊びつくせ
(1991/06)
柏瀬 祐之

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プロフィール

ひろろ

Author:ひろろ
Thrill‐Seeker
刺激が行動原則です。
クライミング、沢登り、ランニング、パラグライダー、音楽、アコギ、ロック、プログレ、画像処理、カラーサイエンス…京都からの発信です。

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