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おすすめの山岳図書 ノンフィクション編 その4

・凍 沢木耕太郎 ★★

山野井泰史関連図書の2冊目です。

沢木耕太郎は著者の若き日の放浪の旅を綴った「深夜特急」などで有名なドキュメンタリー作家ですが、山野井夫妻のギャチュン・カン北壁遭難からの生還劇を題材に山野井と妻・妙子の生き様をドキュメンタリーとして描き出したのが本書です。

著者は登山(クライミング)経験はおそらくないのでしょう。
そのためか、本書の導入部には自らの学習ノート的に、ヒマラヤ登山の歴史的経緯、クライミングスタイル(アルパイン、極地法)の解説、クライミングの方法論と現代ヒマラヤ登山のトレンドなどを詳細に解説し、それに続き、山野井の実践してきたクライミングの足跡を綴ることで、彼のクライミングが如何に先鋭的なのかを浮き彫りにしようとしています。

この部分は事情を良く知る人には若干退屈に感じるかもしれません。
逆に、登山、クライミングを知らない人もこの導入によってすんなりと本題へ入って行けます。
これによってヒマラヤクライミングという特殊な世界と、その中での山野井の位置付けを一般的読者に了解させることに成功しています。

準備ができたら本題の生還劇に飛び込んでください。

二人の生い立ちから出会い、遠征準備、キャラバン、そしてギャチュン・カン北壁登頂後、雪崩による遭難、そこからの生還、そして喪失と再生が山野井と妙子の二人を交錯させ、紙縒りを編むがごとく綴られていきます。

先に紹介した丸山直樹氏の「ソロ」が山野井よりも著者を意識させてしまうのに対して、「凍」では著者を意識することはほとんどありません。
それ故、ノンフィクションとフィクションの境界があいまいになり、まるで小説を読んでいるような感覚になります。

遭難からの奇跡の生還が本書の山場で、息をもつかせず一気に読まされるのですが、実はテーマは山野井と妙子の絆を描きだすことにあると思います。

疲労困憊し、ほとんど動けない妙子を「死んじゃうかもしれないな」と言いながら写真を撮る山野井。

二人の絆を最も象徴する場面です。

クライマーとしての相手の力量を認め、全幅の信頼を置いているが故に下手な励ましも気休めも意味をなさない。
それほどまでにお互いを尊重し合えるからこその絆がうかがえます。
クライミングだけでなく人生のパートナーとしても。




帰国後、山野井も妙子も凍傷により手足の指を切断することになります。
妙子に至っては以前の遭難によって失った指もあり、結果、両手の指全てを失うことになります。

退院後、奥多摩の生活に戻り、なんとか包丁と箸を扱えるようになって、大好きな料理ができると幸せを感じる妙子。

自己実現するということはこういうことなんだろうと思う。


凍 (新潮文庫)凍 (新潮文庫)
(2008/10/28)
沢木 耕太郎

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