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おすすめの山岳図書 ノンフィクション編 その5

・垂直の記憶 山野井泰史 ★★

山野井泰史関連の三冊目。

ヒマラヤ、カラコルムでのクライミング、7編を自ら綴った登攀記録。

文章は沢木など、文筆を本業とするものに及ぶべくもないが、クライマー自らの視点で語られた内容はクライミング経験のある人にとってはそのリアルさに疑似体験させられ、思わず身震いする。

記録は1991年のブロードピーク登頂から2002年のギャチュン・カン北壁第2登までで、ソロクライミングの舞台をヒマラヤに求めた時期をまとめている。

ギャチュン・カン北壁での遭難の顛末は、山野井の記述に妙子の視点からの記述を織り交ぜ、記録により客観性とリアルさを与えている。
沢木耕太郎の「凍」のようなストーリー性は感じられないが、淡々と語られる絶望的な状況に、まるでその場にいるような臨場感を感じてしまう。

各章の間に短いエッセイが挿入されており、山野井自身の人となりが伺えて興味部深い。

その中でも印象的なのが、「山で死んでも許される登山家」というエッセイで

「僕は日常で死を感じないならば生きる意味は半減するし、登るという行為の魅力も半減する。」

「登山家は、山で死んではいけないというような風潮があるが、山で死んでもよい人間もいる。
そのうちの一人が、多分、僕だと思う。これは僕に許された最高の贅沢かもしれない。」


ここに彼の尖鋭的ソロクライミングの根源があるように思う。

「生」を輝かせるのは「死」とのコントラストの中にあり、死と隣り合わせの困難を克服したとき、めくるめくまでの「生」を感じる…
この快感を知ってしまったらもう抜けられないのかもしれない。



フリーソロのスペシャリストのジョン・バーカーが2009年にフリーソロ中の墜落で亡くなりました。
クライミングのジャンルは全く異なるけれども、その精神において山野井とバーカーとは等質のものを感じます。
ギャチュン・カンの遭難がなければ今は山野井も山に散ってしまっていたのかもしれません。

彼だけに許された贅沢を満喫しながら。


垂直の記憶―岩と雪の7章垂直の記憶―岩と雪の7章
(2004/03/01)
山野井 泰史

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