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山岳遭難のプロセス

PC311329.jpg

今まで幸いにして山で遭難したことはありません。

しかし、遭難一歩手前の状況に陥ったことは何度かあります。

今から思えば、どうしてそんな状況になったのか不思議な気がするのですが、ほんのちょっとした行動のかけ違いが遭難への入口へと進むことになります。

随分昔の話になりますが、実体験をもとに遭難に嵌り込むプロセスを辿ってみます。



社会人一年目の秋、友人と二人で剱岳北方稜線の縦走を企画しました。

今回は軽量化を図るため、小屋泊まりとし、費用節約のため、自炊の食糧持参です。
テントやツェルト、登攀用具は携帯しなかったけど、シュラフは持参しました。

計画では、

入山初日、立山から室堂経由で剣山荘泊
二日目に剱岳を越えて北方稜線を縦走し、小窓雪渓を下って池ノ平小屋泊
三日目は阿曽原から欅平まで水平道を辿り、トロッコで宇奈月⇒富山⇒帰京

というものです。

PC311323.jpg

今回の山行は初日から晴天に恵まれ、二日目も快晴で明けました。

順調に剱岳を越え、北方稜線に向かいます。
池ノ谷ガリーの入口でちょっと迷いましたが、なんとか三ノ窓のコルへ。

このあたりからガスがかかってきました。

小窓王の岩壁基部を斜めに登り小窓王の肩へ。
ガスはかなり濃くなり視界は10m程だけど、はっきりした踏み跡もあり、迷わず進みます。
PC311326.jpg


その時、さーっとガスが切れ、右手下方に小窓雪渓が見えてきました。
踏み跡は小窓尾根へ続くものであり、小窓雪渓へは少し手前から下らなければならなかったようです。
PC311324.jpg

ガスが切れなければそのまま小窓尾根に入り込んでいたかもしれません。

教訓1:踏み跡は誰かが歩いた痕跡ではあるが、進みたい方向とは限らない。

小窓雪渓は傾斜も緩く、シュルントもないのでアイゼン、ピッケルなしでも問題なく下れます。
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事前に読んだガイドには池ノ平小屋へは小窓雪渓を下り、右岸に滝が見えたら左岸を50m程登ってトラバース道へ出るとありました。

ちょうど滝が見えたあたりの左手に薄い踏み跡のあるルンゼが見つかり、何の迷いもなく登り始めました。

ルンゼは登るにしたがい急峻になってきて、3m程のギャップに行く手を阻まれました。

ここでちょっとおかしいと思ったのですが、ギャップを越えたあたりに岩に埋め込まれた鉄筋が見えたので正しいルートと信じてギャップを越えたのです。
(未だに何のための鉄筋かわからない)

Ⅳ級程度のクライムですが、登ってる最中は

「ああ、これを越えたら下れないなぁ…」

と感じました。

教訓2:下降用具がない場合、下れないギャップは登らないこと。

ギャップを越えたところで、やはりこれはおかしいと思い逡巡していると、友人が

「ちょっと上を見てくるわ」

とブッシュを登って行きました。

ふと左手を見ると、傾斜の緩いランぺがあり、それを辿れば下れそうです。
引き返そうと友人に声をかけたのですが、返事がありません。

何度もコールしたけど返事がないので止む無く追いかけて登ることにしました。

やっと声が届く距離に近づいたのですが、どうも下ることができない様子です。
仕方がないのでそこまで登ってやっと合流しました。

教訓3:出来る限りパーティーは分断しないこと。少なくとも姿が見えるか声が届く範囲で。
山ではちょっと尾根を回り込んだだけで全く声が聞こえない場合があります。


合流して、

「これ、ルートちゃうで!」
「そやけど、もう引き返せんわ…」


と今後の対応を相談。

地図を見ると池ノ平山から派生する南側の尾根に取り付いている模様です。

池ノ平山東側からは扇状に二つの尾根が伸びているのですが、地図の地形から推測すると尾根の間は谷状ではなく、緩傾斜の斜面で繋がっています。
下れない以上、登るしかないのですが、尾根を越えれば登山道のあるもう一つ北側の尾根へ容易にトラバース出来るだろうと思いました。

日没で薄暗くなる頃、灌木やブッシュを掴む腕力登攀でやっと尾根へ登り抜けたました。
友人は尾根にでれば登山道があるものと思っていたらしく、かなり落胆していました。

期待していたトラバースの状況は暗くて確認できません。

教訓4:情報の正しい共有が大事。とくにメンバーが疲弊していた場合、期待とそぐわない状況に陥った時、いっぺんに気力が失われて動けなくなる場合もあります。

どっちにしても暗くなったのでこれ以上の行動はできません。
尾根は酷いブッシュですが、なんとか二人が横になれるスペースを見つけてビバークの準備に入りました。

教訓5:道迷いした場合の日没後の行動は厳禁。

準備と言ってもツェルトもないので、シュラフを広げるだけですが。

弱気の虫が出た友人は

「これってすでに遭難ちゃう?」
「いや、単なるビバークやろ。騒ぐ程やないって」

と私。

と言いつつも、遠く富山方面の街の灯りを見ると普段の安全な生活とのコントラストで寂寞感がひしひしと湧いてきます。

幸い、満天の星空で無風状態、食糧もガスもふんだんにあるので、不安な中でも結構優雅なビバーク。
実際、混雑した剣山荘より余程快適に熟睡できました。

アルプスの10月はいつ雪が降っても不思議ではないです。
もし雨や雪に叩かれていたと考えると寝るどころではなかったですね。

教訓6:少なくともバリエーションルートに向かう場合、雨具とシュラフ(シュラフカバー)のみでビバークする自信がないなら、ツェルトは必携ですね。

不安な一夜というにはかなり熟睡して目覚めれば快晴!

剱稜線の東面がモルゲンロートで赤く染まります。真っ盛りの紅葉と相まってそれはもう凄まじい景観でした。この場所からでないと眺められない景色です。
PC311327.jpg

PC311328.jpg


パッキングを済ませ目論見のトラバースを偵察。

案の定、向こうの尾根へはだだっ広い平原状の斜面で繋がっています。
朝露で滑りやすい草付きを慎重にトラバースし、尾根へ一登りすると立派な登山道に出ました。

この時の解放感は例えようもありません。一気にドーパミンが出たような多幸感に包まれました。

あとはのんびりと池ノ平小屋へ向かうだけです。
mapx.jpg





幸い「遭難」までには至りませんでしたが、雨や雪に見舞われていたら…、トラバースの目論見が外れていたら…、無理に下って滑落していたら…、と考えると「一歩手前」だったのだと思います。

山ではほんのちょっとしたきっかけで道迷いに陥ってしまいますが、まず第一は不安に感じたら正しいと分かっている場所に引き返すことでしょう。

それでも迷ってしまったら、深みに嵌らないように冷静に行動してください。
パニックは最も傷口を広げてしまいます。

それと、ロープ一本と技術があれば大抵の窮地は脱出できます。
考えてみれば沢登りって道迷いの連続からの脱出みたいなもんですから。


これが低山や縦走中心の方にもロープワークを身につけて欲しいと思う理由です。
径8mm、長さ20mでよいのでロープを携帯すれば安心ですよ。

ではでは、皆さんの安全な登山をお祈りいたします。
来年も安全で楽しい登山ができますように!


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