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おすすめの山岳図書 ~小説編 その5

・高熱隧道 吉村 昭 ★★★

書評が続きます。
いわゆる山岳図書の分類からはちょっと外れるかも知れませんが、舞台は黒部の険谷という紛れもない「山岳」です。

昭和11年、日中事変前の戦時体制が加速される最中、黒部第三発電所建設は着工されました。

「高熱隧道」は発電所建設の中でも最も困難を極めた第一工区、第二工区、その中でも阿曾原谷軌道トンネル工事での自然と人間のたたかいを描いた記録小説です。

黒部第三発電所建設の犠牲者は300名を越えたのですが、そのうち、上記工区の犠牲者は233名であったことからも如何に凄まじい難工事であったのかが想像できます。



この工区を受け持った佐川組の技師・根津は隧道掘削のエキスパートであり、自らの矜持にかけてこの工事に取り組む。

しかし、待ち受けるのは火山地帯が故の高温の岩盤で、それは最高166度にも達した。

たび重なるダイナマイトの自然発火で犠牲になる人夫…

そして、鉄筋五階建ての宿舎を対岸の奥鐘山西壁まで吹き飛ばす泡(ほう)雪崩…

1年3カ月の難工事の末、多くの犠牲を払い、阿曾原-仙人谷間704.9メートルの水路隧道は完成した。




多くの犠牲にもかかわらず工事が継続遂行されたのは準戦時下の軍部の意向もあるのでしょうが、トンネル貫通という、至ってシンプルな目標を共有した組織は目標が困難であればあるほど達成快感をモチベーションとして異常な程の熱狂を持って立ち向かっていきます。

「なぜしんどい思いをして山に登るの?」という問いの答えもこのあたりに在りそうです。

それにしても泡雪崩に代表される驚異的な黒部の自然には圧倒されます。
この大自然の前では人間の力など一蹴されてしまうのですが、反面、強固な意志を持って目的を完遂してしまうのもまた人間です。

対峙の図式を「自然」から「敵対する集団(国)」に置き換えると、熱狂的集団の恐ろしさも垣間見えるのですが。

吉村昭が描きたかったのはそういった「人間の性」なのかもしれません。
それによって人類は進歩もし、そして戦争も繰り返してきたのですから。



第三発電所建設に際して整備された阿曾原~欅平間の水平歩道(日電歩道)
当時、この道を辿る歩荷人夫の滑落も相次ぎました。
PC311329.jpg




高熱隧道 (新潮文庫)高熱隧道 (新潮文庫)
(1975/07/29)
吉村 昭

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